記事の目次
- 「ノゾミ」の話
- 詐欺注意 登録したばかり
- 詐欺注意 すぐマッチングアプリをやめたい
- 詐欺注意 なんでもハッキリ言う
- 詐欺注意 仕事は海外を転々する
- 詐欺注意 写真は別の誰か
- 詐欺注意 偽物のホームページ
- 詐欺注意 「離婚」より「男やもめ」
- 詐欺注意 子供も詐欺の道具
- 詐欺注意 「ワイフ」の呼び方が罠
- 詐欺注意 きちんと挨拶する
- 詐欺注意 住所が嘘
- 詐欺注意 アクセント
- 詐欺注意 いきなり「愛している」
- 詐欺注意 リアルなプレゼント、フェイクの愛
- 詐欺注意 会ってから結婚を決める常識
- 詐欺注意 人に言える恋をしましょう
- 「予想外」を装った展開
- 詐欺注意 税関トラブル
- 詐欺は何回も訪れる
- 詐欺注意 送金後の放置
- 詐欺注意 送金が愛の条件となる
- 詐欺注意 断れたら怪物に変身
- 詐欺師の装う姿
- 誰でも自分の中に「ノゾミ」がいる
「ノゾミ」の話
人間はどれだけ残酷なことができるのか? 国際恋愛詐欺には、心が優しい人には想像もつかないずる賢いトリックがあります。ある事件を例に詳しく解説します。
これは、ノゾミ(埼玉出身、45歳)の話。
仕事は都内の外資系企業の会計士。40歳の時、日本人の元旦那のDVに耐えられなくなり、籍を抜いた。子供なし。
DV: ドメスティックバイオレンス。精神的や物理的な暴力を振る行為。
離婚して初めての一人暮らし。マイペースな生活は新鮮で、それなりに楽しく、気分転換で海外旅行に出かけた。
人生をやり直す覚悟で決めた、初一人旅の行き先は英国。子供の頃から憧れていた、レディーファーストの国。
ノゾミは一週間ほどロンドンに滞在し、夢のような時間を過ごしました。
天気はイマイチだけど、残りの人生はここで過ごせたらいいなぁ!
心からそう思いました。しかし英国で暮らすには、ビザの問題はもちろん、英語力も必要。日本に帰る機内で、ノゾミは今後の人生を大きく変える決断をしました。
次の結婚相手は、イギリス人にする!できれば、新たな人生のパートナーと海外で暮らしたい。
国際結婚してハワイに住んでいる知り合いに、どうやって相手を探したかを聞くと、きっかけはマッチングアプリのmatch.comでした。
ノゾミはすぐ登録し、プロフィールを作成。写真を投稿したらすぐたくさんのメッセージが届き、その多さにビックリ。
しかし、そもそも奥手でバツイチでもあったノゾミは男性選びにかなり慎重。「声をかける=ナンパ」という固定観念が出会いの邪魔をする。でも、動かなければ始まらない。そこで、自分から男性に声をかけることにした。
40代の日本人女性、憧れの英国男性に出会うことはできるのか?
三日目に「Maxwell」という男を発見した。
優しそうな青い目。ちょっと年上の50代。元軍隊(好みのマッチョ系)。英語のプロフィール解読に時間かかったが、プロフィールには、生涯のパートナーを探している、毎日をロマンチックに過ごしたい、といった内容。
ノゾミは30分かけて初メッセージを丁寧に書き、ドキドキしながら送信ボタンを押した。
私の英語、伝わるかな?日本人の私でも大丈夫かな?
1時間後に返事が来た。マックスウェルは日本語がわからないことを謝り、「それでも良かったらぜひ結婚前提に始めよう!」
実はマックスウェルもmatch.comを始めたばかりだった。
詐欺注意 登録したばかり
詐欺師は、初心者のフリをします。
私は、マッチングアプリに慣れていません。良さそうな人を見つけたら、すぐやめます!
詐欺師は、自分が初心者だとアピールすることで、純粋に恋をしたいと思っている人を騙そうとします。純粋な関係を望む人が、騙しやすいと思っているからです。
そしてマックスウェルは連絡手段を変えることを提案してきた。
Hey, do you use Whatsapp?
和訳: Whatsappを利用している?
二人は初めて連絡をとった日、match.comからWhatsappに移ってチャットを続けた。
詐欺注意 すぐマッチングアプリをやめたい
詐欺師がマッチングアプリからすぐ別のアプリに会話を移すことがよくあります。
初心者同士の私たちは、マッチングアプリがこわいから、普通のチャットアプリが良いです。一緒にやめましょう!
詐欺師の目的は、二つあります。
- アプリ内に詐欺の話の記録を残さないこと。(アプリ管理者に報告された場合、アカウントが凍結され、アプリが使えなくなる。そうすると、詐欺師が騙そうとしている人と話せなくなります。)
- 家族や友達と同じ連絡手段(LINE・SMSなど)にすることで、より親しい気持ちが自然に生まれる。
なんでもオープンに話してくれるマックスウェル。真摯に自分に向き合い、本当に結婚前提で話してくれているようで、ノゾミの警戒心も徐々にほぐれていっ
詐欺注意 なんでもハッキリ言う
人間関係において、ほとんどの人の基本姿勢は「相手に好かれたい」です。
人に嫌われるのが怖いので、ハッキリ言えない人が多いです。
しかし、詐欺師は常に詐欺がいずれはバレて、自分が嫌われるとわかっているので、嫌われることを怖がりません。だから、なんでもハッキリ言えます。
詐欺の結果と関係なく、どうせ相手の嫌悪を買うことが決まっているので、騙すだけ騙して、自分の言葉に責任をとることは一切ありません。
本当に卑怯な世界ですね。
ノゾミがマックスウェルに最初に尋ねたのは、仕事のこと。
- 石油の貿易系
- 会社のホームページを教えてくれた
- 肩書きは「Vice President of Sales」(営業の取締役)
- 車はベンツ!
詐欺注意 仕事は海外を転々する
詐欺師は、海外出張が必要な仕事を選ぶことが多いです。理由は二つです。
- 海外旅行に憧れる女性は多い。そのため、海外出張が多いのは好印象になる。
- 海外出張が多いのはお金を振り込んでもらう言い訳に有効。海外移動中に「事件」が発生、解決するためにお金が必要になり、国際振込してもらうというシナリオ。
詐欺注意 写真は別の誰か
インターネットで相手と連絡をとる時、表示されている写真が連絡取っている人のものという保証はどこにもありません。
詐欺師は、他の人の写真を使用します。黒人が白人を装う場合などがまさにいい例です。
写真は、インスタグラム等で一般の人が投稿したものをコピーしています。多くの人は投稿する写真のすべてを公開しているので、詐欺師は写真を集めるのにあまり苦労しません。
詐欺注意 偽物のホームページ
相手の会社がどのようなところかを調べる時、ホームページを確認しますよね。海外の会社だったらなおさら。
でも、ホームページは誰だって簡単に作れます。
会社が実際に存在しなくてもです!
詐欺師は信頼を得るため、偽物のホームページを作ります。詐欺師は詐欺で儲かっているので、デザイナーを雇っいきちんとしたホームページを作ってもらうことができます。
建築家に頼んで、偽物の会社の本社を作るには、かなりの費用が必要ですが、本物っぽいホームページを作るのにはあまりお金はかかりません。
詐欺師は、お金をねだる時「お金をください」より「お金を少しだけ貸して」と言います。あげるより貸すほうは相手が協力しやすいのがわかっているから。(もちろん、詐欺師は「借りた」お金を返しませんが。)
そして、お金を貸してもらうためには、相手を警戒させないようお金持ちを装わなければいけない。そのために、ホームページの肩書きは取締役などの場合があるわけです。
ノゾミが次に確認したのは、マックスウェルの家族の事情。
- 結婚歴あり。奥さんは交通事故で亡くなった。
- 息子を男手一つで育てたシングルファザー。
- 息子は現在大学生、寮生活。
- 子供の手を離れ、残りの人生のパートナーを探している。
詐欺注意 「離婚」より「男やもめ」
詐欺師は、「離婚している」より「配偶者に先立たれた」シナリオを作ることが多いです。理由は、二つあります。
- 相手に離婚歴があると、不安になる人が多く、特に結婚歴のない人にとってはマイナスイメージです。「なんで離婚したか?」「今度の結婚は、同じようにダメにならないの?」
- 現代の中年で「配偶者に先立たれた」ことは珍しいし、かわいそうだと思われます。詐欺師は相手に「気の毒」だと思わせることで、同情を誘い、距離を縮めようとします。
詐欺注意 子供も詐欺の道具
多くの詐欺師は「子持ち」だというシナリオを作ります。「シングルファザー」を装うことで、女性の母性をくすぎり、特にシングルマザーやもう子供を産む年齢ではないが子供が欲しい女性にとって、有効です。
そして、「シングルファザー」だと「大変。かわいそう。奥さんが必要!」と思わせるのにもってこい。自然に「助けてあげたい!」という気持ちにさせます。
また、子供もお金を送ってもらうきっかけにできます。たとえば、「子供の医療手当が必要」などの悲しい話で相手をパニックにさせ、思考停止した相手にお金を送らせることが狙いです。
マックスウェルは結婚に非常に前向き。一週間も経たないうちに自ら結婚の話を持ち出し、ノゾミを「my future wife」(私のこれからの奥さん)と呼び始めた。
詐欺注意 「ワイフ」の呼び方が罠
海外でも日本でも、人との深い関わり合い(コミットメント)に抵抗がある男性はたくさんいます。
理由はさまざまですが、どちみち「結婚の話を後回しにする」ことに変わりはありません。セックスの話はすぐ出したがるのに。
しかし詐欺師はこれらのタイプの男性と自分は違うと主張するようにとても情熱的でロマンチックな言葉を使います。
You are so smart, beautiful, and kind. I would consider it the highest honor to spend the rest of my life with you.
和訳: あなたは頭がよく、綺麗で優しい。残りの人生を一緒に過ごせたら、最高の光栄に思います。
もちろん、詐欺師は、実際にそうするつもりなんてないし、お金を手に入れたらすぐに話は変わります。
真剣な男性は、責任をもって結婚の話をしようとするので、言葉選びに困り、結婚の話をするまで時間がかかる時があります。
詐欺師は、最初から責任をとるつもりなんてないので、なんでもすぐハッキリ言えます。
彼のさりげない言葉もノゾミを喜ばせるものばかり。
Hello dearest
和訳: もっとも愛しいあなた、こんにちは
Talk to you soon honey
和訳: またね、ハニー
マックスウェルは連絡が非常にマメ。時差はあるものの、目が覚めたら「Good morning sweet」、寝る直前に「Good night my love」。
ノゾミにとって、こんなにきちんと挨拶してくれる男性は初めてだったので、すごく大事にされている気分になり、彼に対する愛情がさらに深まった。
詐欺注意 きちんと挨拶する
詐欺師は、なるべく早く自分が好きになってもらいたいので、「一生に一度の愛」と感じさせるようにあの手この手の手段を使います。
そこで、海外にいる詐欺師が使うのが甘い挨拶の言葉。相手にいつも自分のことを考えさせるために、挨拶は良い作戦です。
起きてから最初に連絡する人…
寝る前に最後に連絡する人…
なんとロマンチック!
挨拶は当たり前のことなのに、多くの男性は当たり前のようにしません。
この隙間に詐欺師が入りこんでくるのです。
挨拶をすることは簡単なことで、1日2回でも、数秒で済ませられます。しかもきちんとまめに実行すれば、相手に詐欺師のことを考える癖がつけさせてしまえるのです。
ゆえに、きちんとした挨拶は詐欺師の効率的な手口の一つです。
もちろん、「挨拶をきちんとする人=詐欺師」ということではありません。素敵な男性もきちんと挨拶をします。なので、言葉だけではなく、相手の行為にも注目しましょう。
同僚に「そこまでしなくても」と言われるくらい仕事を慎重に進めるノゾミが、2週間も経たないうちにマックスウェルにメロメロになった。
次は家の話。お互いの住所を交換し、Google Mapsのストリートビューで見てみると、立派な二階建ての住みやすそうな広い家だった。
詐欺注意 住所が嘘
アメリカ人を装っている詐欺師が本当はアフリカに住んでいるからといって、アメリカの住所を聞かれたら詐欺がバレると思わないで。
詐欺師は、住所を聞かれたら教えてくれます。場合によって、自ら教えることもあります。
住所を教えることで、信頼を高めることができるからです。ネットで住所が存在するかどうかの確認はGoogle Mapsなどで簡単にできますが、実際にそこに誰が住んでるのかを確認するのはそれほど簡単ではありません。
詐欺師は、住所を教えても、海外にいる相手がすぐにそこに行けないので、簡単にはバレないということも計算済みです。
仮に詐欺師宛に郵便物を送ったとしても、詐欺師は適当な言い訳をすれば良いだけです。
まだ届いていないですね。この地域だと、国際郵便はよく遅れます。
国際恋愛詐欺の多くの事件は、2ヶ月以内に終わってしまうので、郵便物が戻る前に、詐欺師はもう消えていることが多いのです。
そして、一流の詐欺師は、郵便物も受け取れる可能性もあります。アメリカやイギリスに共犯者がいることもあり得ます!
そして、ノゾミとマックスウェルは音声通話もするようになった。
ノゾミにとって、彼のアクセントは少し聞きとりにくかったけれど、これもまた英語を勉強するモチベーションになった。
詐欺注意 アクセント
アフリカでは、イギリス英語が主流です。アメリカ人と名乗りながら、イギリスアクセントで喋る場合は詐欺だと考えられます。
また、アフリカのアクセントや固有表現もあるので、それらも詐欺のサインになります。
「I love you」と初めて言われたのは10日目。
展開が早すぎる?ノゾミは慎重に考えてみた。
こんなに早く良い人が見つかるなんて思わなかった。でも、彼はまさにわたしが待ち望んでいた人。やっと会えたと考えたら、むしろ遅いかも?
詐欺注意 いきなり「愛している」
外国人は日本人と同じ人間です。外国の文化が日本のものと違っても、男性がいきなり「I love you」と言ってくるのはおかしいです。
アプリでチャットしただけでの会ったことのない日本人に、10日そこそこで「愛している」と言われたら、その言葉を信用できないはずです。
外国人も例外ではありません。愛は一緒に時間を過ごしてから芽生えるもので、会ってもいない人にすぐ芽生えるようなものではありません。
数日後、ノゾミが夕食を終えて皿洗いをしていたらチャイムが鳴った。
ドアを開けたら、バラ45本の花束を届けにきた、黒猫の宅配人だった。
イギリスにいる、日本語の話せないマックスウェルが、わたしのためになんとか手段を見つけて、日本の花屋さんにお花を頼んでくれた。しかもこんなステキなバラの花束を!
ノゾミの心が踊った。
詐欺注意 リアルなプレゼント、フェイクの愛
詐欺師は、お金を送ってもらうために、相手の信用を得なければいけません。しかし、詐欺師は相手に会うことができないので、なんらかの方法で「私は実際に存在するよ!」とアピールをしたいわけです。
そのためには、物理的なプレゼントを贈ることが効果的です。
花束やチョコレート、ネックレスやピアスといったジュエリーも珍しくありません。場合によっては、「お小遣い」を詐欺師の方から送ることもあります。
間違いなく、詐欺師はいずれお金を振り込んでくれと頼んできます。その時、「お金ちょうだい」ではなく「少しだけの時間、お金を貸して」と頼むことが多いです。「あげる」より「貸す」方が相手に協力しやすいからです。
「お小遣いをくれた人が困っている時、お金を貸すのは普通じゃない?」こう思わせるのが詐欺師の汚い手です!
ちなみに、詐欺師がプレゼントを買ってくれたとしても自分のお金で買ったものではありません。盗んだクレジットカード番号でオンラインショッピングをしています。クレジットカード会社がその悪用に気づいたらカードを凍結しますが、それまでにプレゼントが発送されれば、詐欺師の勝ちです。
それからマックスウェルはさらに情熱的に。
I want you to live in London with me.
和訳: ロンドンで一緒に住もうよ。
Let's become family.
和訳: 家族になりたい。
I need you to be my wife!
和訳: 結婚して欲しい。
具体的に会う話が持ち上がった。彼は来週、仕事で中国出張。その後、英国に帰る前に、ノゾミに会いに来日する。
指輪持参で。
オンラインで出会ってから5週間後、関係がそこまで進んだ。
ノゾミは思った。「一生に一度の恋」に違いない。ドキドキが止まらない。彼に会うために新しいワンピースや化粧品を買い、前日ヘアサロンの予約もいれた。
詐欺注意 会ってから結婚を決める常識
アメリカでもイギリスでも、日本と同じく、少なくとも数回会ってから結婚を決めるのが常識です。
一度も会ったことのない人に「指輪をもってくる」という話は、赤信号です。
彼のことはまだ家族や友達に話していなかった。
ネガティブなことを言われ傷つくのは嫌だから、指輪をもらってから、彼のことをみんなに紹介すれば良い。
詐欺注意 人に言える恋をしましょう
詐欺師に騙される多くの人は、騙される前にその恋を家族や友達に話していません。でも、周りの人に言うことで、本人が見えないことがみえることもある。
本来、誰よりもあなたの幸せを願っているのは?
- 生まれた時からあなたを知っている家族
- 昔からあなたを知っている友達
- 数週間しかチャットしたことがない男
「予想外」を装った展開
マックスウェルがロンドンのヒースロー空港を発ち、中国に向かった。
ところが、中国に着いたら、税関でトラブルが起きた。
Nozomi, I'm in trouble. I'm really sorry, but I need your help.
和訳: ノゾミ、大変!本当に申し訳ないが、あなたの助けが必要。
彼の話をまとめると、仕事に特別な機械が必要。タイから手配してもらったけれど、税関で輸入について理不尽なクレームをつけられ、お金を払わないと機械は手に入らない。機械がないと、お客さんの信頼を損なう、セールスの話が進まない、1億円の案件を失ってしまう。
詐欺注意 税関トラブル
国際恋愛詐欺において、送金お願いの定番きっかけは、税関トラブルです。
税関で第三者がお金を支払うことはあり得ません。税関の話のすべてが詐欺なのです。
海外旅行したことがない人はこの事実を知らない人が多く、騙されやすいので、詐欺師はチャットし始めたらすぐ海外に行ったことがあるかを確認することがあります。
ノゾミは彼の説明を聞き、初めて涙が出た。
これは私たちにとって初めての試練。そして奥さんになる私は、未来の旦那さんである彼に、自分が頼れる存在であることを証明する!
ノゾミは覚悟を決めた。
相手は、話し続けた。
お金を貸してほしんだ!手もとにあるトラベラーズチェックは日本でなら簡単に換金できるから、来週、来日する時に現金で返す!本当に申し訳ない。でも、どうしてもノゾミの助けが必要なんだ。
You're the only one who can help me! Please.
和訳: お願いだ!他に頼る人がいない。
音声通話で泣きながら彼は払い戻す約束をしました。
ノゾミは、同じような状況をネットで調べまくった。中国の政府はひどい。中国の情勢や、空港・税関の仕組みなど、マックスウェルに役立つ情報や手段を探した。
中国に詳しい知り合いにも聞いた。それらの話はマックスウェルの置かれた状況を想像するに十分で、マックスウェルをなんとか助けてあげたかった。
もちろんノゾミにも不安はあった。まず、紳士が女性にお金を頼むのはおかしい。そして、これは仕事のためのお金。50代のビジネスパーソンが、仕事関連のお金を他人から借りるなんてことはあるだろうか?
それに彼に言われたのは「他に頼る人がいない。」
なんで彼には他に頼れる人がいないの?
これは最大の疑問である一方、自分だけが彼が頼れる存在なんだと思わせる言葉だった。
今まで、ノゾミはリスクを避けるような生き方をしてきた。そうやって何を手に入れた?正直に答えると虚しい気分でいっぱいになる。両親から愛は注いでもらえなかった。元旦那からは暴力だけ。
こんな人生もう嫌だ。
溜まった不満、人生をやり直したいという強い思い。マックスウェルは、そんなノゾミの前に現れた紳士だった。
わたしは愛を信じる!
そう決心して、ノゾミは彼に送金した。
愛している人だから。
彼と結婚して幸せな家庭を作りたかったから。
詐欺は何回も訪れる
マックスウェルは送金を確認し、たくさんの感謝の言葉を送った。
しかし、ノゾミの嬉しい気分は長続きしなかった。送金してから、連絡の数が減ったように感じた。ノゾミはさらに不安になった。まるで「今まで連絡がマメだった男性と初めて夜を過ごした後、連絡が途切れた」ような展開だった。
彼はトラブルの解決で忙しいのかな?だから私から連絡するのは迷惑… でもやはり不安!今までと違うから。
詐欺注意 送金後の放置
お金を送った後、詐欺師は少し距離をおきます。なぜなら、また送金を頼むつもりなので、パニック状態を維持したいからです。
三日後、トラブルが再発。
今度もまた税関の問題。即時に対応しなければいけないから、日本に来る日も先送りしないといけない。
今回も50万を送って欲しいと。
I'm so sorry, but this is it. I promise I won't need any more money.
和訳: 本当に申し訳ないが、これで最後。これ以上、お金はお願いしないから。
I swear I'll come to Japan next week. Then I'll pay you back everything.
和訳: 来週は絶対に日本に行くから、その時ぜんぶ返す!
I love you so send me the money. I am great at business. This is my first time to have this problem!
和訳: 愛しているから、送金して。俺はうまく仕事をしてきた。こんな厄介な案件は初めてだ。
If you do this for me, I will be with you forever.
和訳: ここで助けてくれたら、一生大切にするよ!
詐欺注意 送金が愛の条件となる
詐欺師は送金を頼む時、「これだけすれば〜」というようにいうことが多いです。
最後に、「お金を送ってくれればあなたを愛す」ような言葉になります。もちろん、これは嘘で、送金してしまったら何回も送金を頼まれるだけです。
しかし、詐欺師を婚約者だと思っていた人にとって、99%の確率で詐欺と分かっていても、やはりその1%を信じたい。乗りかかった船主義で、詐欺と知りながら送金する人もいます。
ここまで展開すると、マックスウェルを愛しているノゾミも、詐欺を見逃せない。
ノゾミは初めて「ノー」と言ってみた。すると、今までと違うマックスウェルが登場。彼女に罵声を浴びせ、侮辱した。知らない言葉もたくさん出てきて、辞書で調べたら、胸をえぐられるような苦しみと痛みが走った。
詐欺注意 断れたら怪物に変身
相手が送金に対して否定的になると、今までロマンチックだった詐欺師は怪物に変身します。優しい言葉が効かなかったら、すぐ攻撃し、ひどい言葉で追い込みます。
詐欺とわかっていても、愛してた人がいきなりひどいことばかりを言うようになると、あまりのショックで罵声を止めてもらうために送金してしまう人も少なくないのです。
この時、被害者は詐欺師の本当の姿を初めて見てしまいます。
私、この人知らない。
6週間目で、ノゾミはやっと気づいた。「恋に落ちた」彼のこと、本当は何も知らない。
素敵なことをたくさん言ってくれた。連絡もマメだった。結婚には非常に前向きのようだった。
でも、すべてが「言葉」に過ぎなかった。
一度も彼と会ったことがない。
それなのに、100万円を送金してしまった。
彼からもらったのは、45本のバラだけ。
新たな未来を夢見て愛した人は、詐欺師だった。
それからノゾミは自殺未遂を起こしたが、幸い友達に見つけられ、セラピーに通うようになった。事件の5年後、ようやく普通の生活に戻っている。(このウェブサイト作成時点)
詐欺は、恐ろしいものです。巻き込まれる前に気づくのが一番という思いで、このウェブサイトを書きました。
詐欺師の装う姿
ノゾミの話を振り返って、「マックスウェル」の装ったイメージの特徴を確認しましよう。
詐欺師は、世界各国の女性を相手にしているので、なるべく「どこでもモテる姿」にしたいです。
誰でも自分の中に「ノゾミ」がいる
自分はノゾミのように騙されるはずがないと思っている人こそ騙される。誰でも詐欺にひっかかるリスクがある。
なぜなら、われわれ人間には必ず望みがあるからです。詐欺師は、その望みを叶えてくれるシナリオを作るのが非常に得意です。
夢を一時的に見せてくれる…これが詐欺師の仕事です。
不可能だと思った夢を見せてくれることで、とんでもない金額を儲けています。
詐欺師は、結婚したい人の心理をうまく利用している。
結婚となると、最初に候補者の数が多くても、最後には一人に絞る。
卑怯な詐欺師は、自分がその「一生に一度の一人」と相手に思わせたら、なんでもしてもらえると知っている。
そうすれば、短時間で多額の収入も得られる。
結婚したい人は、相手を信用するまでは不安だけど、「この人にする!」と決めた以上、自分の信用を損なうことが起きても、乗りかかった舟主義で信用し続けようとすることが多い。
つまり、信用してもらえたら詐欺師の勝ちです。
そして、詐欺師の求めている金額は、びっくりするほど少額かもしれません。これには世界経済の事情があります。次の投稿のテーマです。
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エド先生のプロフィール
- 2冊の著者
- 恋愛や学習のコーチ
- ボキャブラリーの長期記憶を研究中